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久留米市民オーケストラホームページアドレス:http://www.kurumeshiminorchestra.jp/


  
How to Bruckner SYMPHONY No.4    メールはこちらまで(江上 直)


                                                      
文責 トランペット 江上 直


 曲のタイトルから美しい旋律に満ちた曲を想像される方には、期待はずれかもしれません。シューマンやショパンにとっての「ロマンティック」が一人の女性への愛であるとすれば、教会オルガニストであったブルックナーにとっては、森や自然、そしてそれを作り給うた愛する神への想いであったようです。

1)ブルックナーの聴き方・・・響きに浸ってみよう

 まずブルックナーの曲を演奏中の弦楽器群に注目。右手に持つ弓をいっぱいに使って朗々と旋律を奏でることの多い弦楽器奏者が、ブルックナーでは曲の大半を右手を小刻みに使う「刻み」でハーモニーを作っています。そして次に金管楽器群、普段はリズムの強調、和声の補強など裏方の仕事に使われることの多いトランペットやトロンボーンが、今日ばかりは朗々と響き渡ります。
オルガン奏者、ブルックナーは旋律でなく「響き」で自らの想いを我々に伝えているのです。ですから彼の音楽を聴く時、耳で旋律を追いかけてはいけません。お世辞にも一流のメロディーメーカーとはいえない不器用な作曲家のゴツゴツとした組み立てに、5分間で退屈しきってしまうこと受け合いです。
あなたは今、コンサートホールではなく石造りの教会の中にいると想像して下さい。目の前にいるのは指揮者とオーケストラでなく、パイプオルガンとオルガニスト。そして天井(天上)から降ってくるパイプオルガンの響きに身を浸すように。そう・・・・それが「ブルックナーの聴き方」です。ある瞬間・・ふっと・・音になっている自分に気がつく。


2)ブルックナーの音楽の特徴

ブルックナー開始(原始霧)
 彼の交響曲の大半は2小節の序奏の後に旋律が出てくるパターンで始まります。今回の「ロマンティック」は4つの楽章いずれもこのパターンです。第1楽章では弦の2小節の序奏(刻み)の後にホルンが主題を吹奏します。ブルックナーの音楽は深いアルプスの森の霧の彼方からやってくるのです。それがだんだんと近づき、遂に巨大な光の柱が目の前に聳え立つ。彼の交響曲9曲全てが同じように開始されます。ベートーヴェンが残した、同じ9曲の交響曲が全て異なる始まり方をするのと対照的です。

ブルックナーリズム
 2連符+3連符(譜例)のリズムパターン。交響曲第4番では1楽章の最初の盛り上がりで金管楽器に大きく現れます。当初書いていた5連符では演奏困難、という弟子たちの意見を受け入れ、この形に直したと言われています。
人の言うことに左右されがちな、おどおどした不器用なブルックナー。一つの曲に多くの版が存在する理由の一つです。
*ブルックナーがウィーンフィルを指揮した時のこと。なかなか棒を下ろさない彼に、コンサートマスターが「先生、どうぞ始めて下さい」。ブルックナーはそれに対し「いえいえ、皆さんがお先にどうぞ」てな話があったそうです。

ブルックナーユニゾン
 全ての楽器がフォルティシモで同じ旋律(音)を奏するブルックナー得意の力技。(例・・4楽章の第1主題)まさにホールいっぱいに響くパイプオルガンの壮大な迫力が味わえます。誰にでも書けそうな手法ですが、何と言っても最初にやったヤツが一番偉い。(松尾芭蕉の句「松島や、ああ松島や、松島や」と同じ!)音楽史上最大の「コロンブスの卵」です。

ブルックナー休止
 何の前触れもなく全ての音がなくなり、また始まる。曲の中にしばしば現れるブルックナー独特のフェイント技。とっつきにくい作曲家の筆頭に上げられる理由の一つかも。
弟子が理由を尋ねたところ、巨匠いわく「そりゃ君、ワシは大事なことをしゃべる前には息をたくさん吸わにゃならんからだよ」
音色を変えるため演奏中にストップを操作することの多い(当然その時は演奏が止まる)オルガニストにとって、突然の休止は不自然なことではなかったのかもしれません。

ブルックナーブロック
 前項「ブルックナー休止」と関連します。ブラームス、ベートーヴェンの音楽のように全体が一つの大きな流れを形作るのでなく、休止でさえぎられた前後では関連性のない音楽のブロックが浮き沈みする彼独特の話法。金管群の壮大なコラールの後、突然「休止」・・・・そして静寂の後、弦楽器がひそやかにピチカート(弦を指ではじく)を始めたり・・。前項同様、難解な作曲家のヤリ玉に上げられる理由の一つ。

3)独断と偏見に満ちたCD評


クーベリック バイエルン放送響

 金管のffの部分でも弦の刻みがきっちり聴こえる。弦の人の研究用に最適。
演奏も極上です。


ベーム    ウィーンフィル

 ウインナホルンの独特な深い響き。黄金のシャンデリアのようなトランペットにチャーミングな木管。ブルックナーはウィーンフィルで自分の交響曲の演奏してもらうことを望んでいた。ううん、さもあろう。弦の響きも極上。


●カラヤン   ベルリンフィル

 聴き始めて10分でイヤになったので全部は聞いていない。

理由ですか?だって中味が「からやん」。カラヤン好きの御仁には申訳ないが。
来日公演のときやり慣れているはずの「田園」で弦がずれよった・・・。


朝比奈 隆  大阪フィル (89年、94年、2001年録音)

 日本にこんな巨大な演奏をする指揮者がいたのだ。どの演奏を聴いても、朝比奈先生の演奏であることがすぐわかり、しかも3つの演奏が全て違う。
「自分は才能がないから一日でも長く生きて繰り返し演奏して高めるしかない」と最後まで試行錯誤を続けられた巨匠。
「93歳のじいちゃんがこんなことやるか?」という瞬間がたくさんある。2001年録音盤が最も素晴らしい。2000年にN響を振られたCDもある。


ティントナー スコティッシュナショナルpo

 ゆったりとしたテンポでじっくり進められる味のある演奏。遅れてきた巨匠の遺作。金管の音は明るすぎてちょっといただけないが。


シュタイン  バンベルク響

 最もドイツ的な音がするといわれるオケの演奏。きっちりまとまった隙のない演奏だが、今一つ伝わってくるものがないような・・・。オーボエのトップを吹いているのは、現N響首席の茂木大輔氏。


ヨッフム   ドレスデン国立

 ねえ、ちょっとテンポ変えすぎじゃないの?いくらもたれるからと言ってもサ。聞いていてどうも落ち着かない。「過ぎたるは及ばざるが・・・」


ワルター   コロンビア響

 やさしく柔らかい第2楽章の「歌」が聞きもの。金管の音は明るい昔のアメリカンサウンド。木管に何箇所か楽譜の改変がある。(1楽章47〜50小節など)


飯守泰次郎  東京シティpo

 みんな、聴こう!いいぞ。
4楽章でグロッケンシュピールを使っている。わがオケではどうなるだろう。


注1)
 朝比奈、ワルター盤はハース版を使用。他はノヴァーク版

注2)
 第1楽章の169小節目、スコアではpppの指示のあるVc、Cbの全音符をffの強いアタックで弾かせすぐにdimさせているのはワルター、飯守の2盤のみ。

 2003年2月4日立春より再カウント